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『お姫様とジェンダー』若桑みどり|ディズニー童話に潜む“無意識の刷り込み”

更新日:4 日前

【書評・レビュー】

書評・レビュー「お姫様とジェンダー」アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門|若桑みどり


「なぜ私たちは“結婚”に憧れていたのかーー?」


辛い日々も辛抱していれば、いつか白馬の王子様が私を見つけくれて、幸せな結婚ができるはず!これまで多く女性が、それこそが自分の幸せだと、憧れてきました。


けれど、よく考えてみてください。


イケメンでお金持ちで誠実な理想の王子様のような男性が、ひたむきに頑張っている自分を“見つけてくれる”可能性なんて、現実にはほんの一握りしかありません。にもかかわらず、なぜ多くの女性が「絵に描いたような理想の男性との結婚こそが幸せ」と思い込んでしまったのでしょうか。


その答えの一端は、私たちが幼少期に見てきたディズニープリンセス物語にありました。





幼少期から刷り込まれたディズニープリンセス物語


私たち、特に20代後半以降の女性たちが幼いころから親しんできたディズニー映画を振り返ってみましょう。


  • 『白雪姫』(1937)

  • 『シンデレラ』(1950)

  • 『眠れる森の美女』(1959)

  • 『リトル・マーメイド』(1989)

  • 『美女と野獣』(1991)

  • 『アラジン』(1992)

 

どれも夢のある素晴らしい作品ですが、その結末は王子様との「結婚」、あるいは「結婚が約束されること」で締めくくられています



なかでも、1937年〜のクラシック期プリンセス像(白雪姫、シンデレラ、オーロラ姫)は

「女性は受け身で待ち、結婚によって完成する」という家父長制的(男性に決定権がある家族システム=パトリアーキー)価値観を肯定し、世代を超えてその価値観を子どもたちに無意識に刷り込み続けてきました。



学術研究でも、

ディズニープリンセス映画を時代別に分析し、クラシック期は「受動性・従順・家庭的役割」が強調されていた。

近年の作品では能動的特性が増えているが、完全には払拭されていない(ルネサンス期:アリエル、ベル、ジャスミン)。

プリンセス文化が女の子に「美しく・従順で・結婚を夢見る存在」という消費可能な理想像を与え続けている。と指摘しています。





『お姫様とジェンダー』若桑みどりの内容と魅力


若桑みどり著『お姫様とジェンダー』では、このような“無意識の刷り込み”がどのように形成されてきたのか、そしてどのように現実に影響しているのかを、ディズニー童話やプリンセス像を題材に鋭く解き明かしています。

 

たとえば、<待つプリンセス>を代表するオーロラ姫や白雪姫、そして白雪姫の継母について、著者はこう指摘します。

 

相手が出てくるまで、美貌だけは守り、孤独のナルシシズムの中に生き、鏡に映る「美貌」だけに熱中し、知識を獲得することもなければ、社会と交わることに興味を示さない、(皮肉をこめて)正しく「眠った」少女たちが(現代に)どれほどいるだろうか。※()内は筆者の補足

 

彼女は幸せの訪れを待っていたために、自分の力で自分の望む状況を作れると言うことを忘れてしまったのではないだろうか。

 

これらの一節は、気がつかぬ間に童話から影響を受け、“選ばれるために美しくあろう”とする女性の心に警鐘を鳴らします。





無意識の刷り込みに気づいた瞬間


この本は、私が初めてジェンダー格差について本格的に読んだ一冊でした。

一番の驚きは、当たり前だと思っていたことが、実は他者による「刷り込み」だったと気づいたことです。

 

美しい女性が王子様に選ばれるのは当然。家事ができるのは女性の役割。そう思い込んできましたが、本当はそんなことはない。

これまで「ダメな女性」と否定してきた、美しくもなく家事も嫌いな自分を、少し肯定できた気がしました。

 

同時に、こうした物語は、権力やお金を持つ男性を「王子様」として輝かせ、女性の憧れを利用しながら、男性社会の権力ピラミッドを支えてきたとも感じます。

つまり、このプリンセス像によって、ごく普通の多くの男性にとっても、女性の理想に応えられない“生きづらさ”が続いてきたことが想像できます。

 

これらの「無意識の刷り込み」に気づけたことは、私が構想しているミュージカル『最果てのミューズ』の出発点にもなりました。

私たちに染みついた固定観念を揺さぶる新しい物語を描きたい──そう思わせてくれた一冊です。




まとめとおすすめ|『お姫様とジェンダー』はこんな人に読んでほしい

 

ジェンダー格差とは固定観念の刷り込みによって起こる、無意識の格差や差別です。無意識によるものなので、理解したり、実感するのがとても難しいのですが、

 

『お姫様とジェンダー』は、ディズニー童話を題材にしているので非常に分かりやすく、同時に自分の中に眠っていた固定観念に気づきやすい本です。


ジェンダー格差を自分事として実感しやすく、フェミニズムをこれから学びたい人にとっての入口になる一冊です。

 

こんな方におすすめです

 ・ おとぎ話や童話を新しい視点で読み直してみたい方

 ・ お姫様像やジェンダー役割に違和感を持ってきた方

 ・ 子どもに伝える物語の裏にある価値観を考えたい方

 ・ フェミニズムやジェンダー論をやさしく学びたい方


 
 
 

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