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③クラウドファンディングのわけ



この記事では、なぜ私がクラウドファンディングを実施しようと思い立ったのか、その理由をお話しさせていただきます。


まず、X(旧ツイッター)にも投稿したのですが、私はあまりこのクラウドファンィングという手法が好きではありません。正確には「日本の」クラウドファンディングが好きではありません。


2016年頃、日本でクラウドファンディングという手法が話題になり始めました。

クラウドファンディングとは、「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語で、「インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する」ことをです。


当時の私はこの画期的なサービスに驚き、「夢に共感してもらうことで、不特定多数の人から資金を調達できるなんて、なんてすごい!」と心躍り、すぐに実際に実施してみたいと、サービス各社に問い合わせました。


【日本に根付いていない寄付文化】

しかしながら、そこから見えてきたのは日本という土地柄とのアンマッチでした。

海外とは異なり、日本にはあまりドネーション(寄付)の文化がありません。

以下は当時の国別で見た個人寄付の特徴です。日本の寄付者率の低さがわかります。



クラウドファンディングの事務局からは、SNSのフォロワー数や声をかけられる友人の数の表を求められ、つまるところ、自分の知り合いを総当たりして資金を募るようにと指示をされました。


それでは「インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する」という画期的な部分が台無しです。


また、調達金額の10%〜20%という、サービス手数料の高さもネックとなりました。寄付という文化がない国で、頭を下げて、必死に集めたお金。寄付者にとっても生活資金の一部であったはずの大切なお金。それを自分の夢のために預けてくれたのに、20%って。

まるでクラウドファンディングサービス事業者のための働き蟻のようだと思いました。


最近は低い手数料を謳うサービスもあるようですが、一方で、想いやプロジェクトの「広告化」が目につくようになりました。

サービス開始当初は、不器用でも想いのこもった手作りの文章や画像、動画が掲載され支援者視点で応援したいと思えるプロジェクトがいくつもありました。

ところが近年は、明らかにプロが作った「メッセージ」「画像」「動画」が次々と掲載され、美しいだけで代わり映えのしないプロジェクトが増えました(あえて素人っぽさを演出する場合もあってそれもまた怖い)。クラファンコンサルタントなる人もいたりして、資金調達ができたとしても、最終的にその人たちにいくら払うんやねん、、という気持ちになります。



【「根付かない寄付」×「広告化」で起こったこと】

寄付をしてくれる人が少ないという課題に対して、まず引き起こったのが「返礼品の魅力向上」です。より高価にしたり、風変わりな返礼品を設定し、その魅力に惹かれた人に支援をしてもらう方法です。


ところが、これらの方法により支援金のほとんどが返礼品の製造や送料、人件費になってしまって、実際の手取りは「……」なんて事例は少なくありません。


それでは頑張ってクラウドファンディングをする意味が半減してしまうので、より支援者を集めようと、次に改善しようとするのが「伝え方」です。

自分の想いがうまく伝わらない、返礼品の魅力が伝わらないから支援者が集まらないのでは?ということで、プロに頼り、プロのテクニックで支援者の心を動かそうとします。


ここでお伝えしたいのは、これらはいったい何なのか、ということです。


高価な返礼品とは「商品」であり、風変わりな返礼品は「サービス」と言い換えられます。

自分の想いの広告化は「ブランディング」で、返礼品も含めプロジェクトの広告化は「プロモーション」と同じです。


つまり、夢を実現するための資金調達のはずが、「クラウドファンディング」という、ただのビジネスになっているということです。


起案者と支援者を繋ぎプロジェクトを達成する、という美しいイメージの実態は、

販売者と消費者を繋ぎ利益を得る、です。


それでは実際に実態を見てみましょう。大手プラットフォームのリンクを以下に置きます。





まるで通販サイトのようですね。

当初のような「お店を作りたい」「世界一周したい」などの夢のあるプロジェクトは今やほとんどなく、商品を予約販売するためのプロモーションサイトのようです。

※余談ですが、これらのサイトを見ていただくと、クラファンで支援する人たちがどんな人なのか性別や年齢層が見えてきます。


それ以外には、

「有名コンテンツ」を利用したイベント支援、そして「悲惨」を売りにした(本当に悲惨で深刻な場合は除く)寄付金の募集があります。


現在のクラウドファンディング成功雛形は「予約販売」「有名コンテンツイベント」「悲惨募金」です。私は個人としては、この3つのどれもにも「想いを実現させてあげたい」と共感できないし、それ以外のプロジェクトの達成金額は小さく、とても不特定多数の支援者を得られたとは思えません。


今思えば、日本に導入された時のプロモーション的詭弁(きべん)で「夢を叶える資金調達手法」と謳われただけで、そもそもが夢物語だったのかも知れません。。悲しい。


そのような理由で日本のクラウドファンディングが好きではないのですが、ではなぜ「クラウドファンディング」を実施することにしたのでしょうか…。



【資金調達の方法】

資金調達の方法はいくつかあります。


①稼いで資金を貯める

②助成金、補助金

③企業協賛金・案件

④個人投資家による投資


それぞれについてProtopiaの現状をお伝えしていきます。


①稼いで資金を貯める

Protopiaを立ち上げてからもうすぐ3年。いろいろと挑戦してきました。本来はこの方法が回れば良いのですが、小規模団体が「演劇」を売って利益を得ることの難しさを痛感しています。


小劇場が主催公演で得られるチケット収入は大体赤字です。それをグッズ販売で補うのが最近の傾向です。ただし、そもそも公演が実施できないと利益は得られません。


なので、公演をしていない時に収入を得る方法も日々模索しています。

YoutubeやTikTokにも挑戦し、TikTokでは前作「人間ライブラリ」の公演映像の一部が、投稿から1年を過ぎた今もなお再生され続けて、現在303万再生、18万いいねを獲得しています。「感動した」「初めてミュージカルを見たいと思った」「本編を見てみたい」というコメントも多くあります。だけれど、こんなに再生されているのに、ここから¥1,500の有料配信コンテンツに課金してくれる人はほぼいません。まれに¥150の楽曲や、¥300の原作小説が売れるくらいです。「無料」から「有料」への壁の厚さ、今の時代に「映像コンテンツ」を有料で売るハードルの高さを感じます。


ミュージカルの制作期間は長く、私たちだと約1年ほどかかります。現状では、一年間の維持費だけで精一杯で、新作の初期費用の工面するまでの利益が貯まらないのが実情です。


「資金が貯まったら新作に挑戦しよう…」そんなことを言っていたら、その日は一生来ないのではと思い、積極的に資金調達を開始することにしました。



②助成金、補助金

本プロジェクトでも今後申請予定です。ただし、申請には具体性が求められます。企画内容、脚本内容の具体性はもちろん、いつどこで誰がいくらで働くのか、詳細を書いて提出する必要があり、タイミングを待つ必要があります。


そして、加えて今しがた、目星をつけていた東京都の助成金の説明会に参加してきたのですが、公演で利益が出たらその分の助成額を返金しなければならないということでした。仮に助成金を得て公演が出来ても、400万円以下の利益は相殺されることが判明。世知辛い世の中です。



③企業協賛金・案件

短期間で大型の資金を調達したい場合、企業に支援していただいたり、案件と絡めて資金を得る方法があげられます。

実際、本作以外の企画ではこの方法で資金調達を進めようとしている作品もあります。


しかし、今回は「働く女性とジェンダー格差」というテーマにおいては、難しいと判断しています。社会的には企業として取り組むテーマではありますが、協賛するテーマとしては主流ではないからです。主流ではないというのは「短期的に利益が出ない、儲かりそうもない」という意味です。

(詳しくは、前回のブログ「なぜ、働く女性とジェンダー?」をご参照ください)


また、一番初めのブログ「Protopiaが作りたいオリジナルミュージカルとは?」にも書かせていただいたのですが、私は、観客の思考にアプローチするアート色の高い作品を作りたいと考えています。


私が思うアートとは、常に自分を枠の外に引き出してくれるツールです。

自分が考えても見なかったこと、問題視したことがなかったことに目を向けさせてくれる存在です。


専門用語ではそれを「脱構造」と言います。

「脱構造」をすると、目が覚めるような、そして、生まれ変わったような感覚を得られます。それは歴史や社会からのしがらみを捨てて、本来の自分に脱皮していくようです。

涙が溢れて止まらなくなることもあります。それからは目に映る景色が変わり、価値観、言動、行動もアップデートします。

私はその感覚を皆さんに体験してほしいと思っています。


ですが「脱構造」は、既得権益者から嫌われます。

今ある構造でうまく利益を得られていたのに、人々の価値観や行動が変化してしまっては困るのです。


また「脱構造」は、人々の心を大きく揺さぶり、一時的に不安定にします。それまで正しいと思っていた自分の人生観が揺らぐからです。

アートが好きな人は、正しいという感覚が幻想だと知っています。だから、その揺らいでいく感覚がたまらないのですが、「脱構造」の経験が浅いと、自分を否定されたと感じ、それは違ってる、自分には関係ない、見たくないと目を逸らそうとします。


ジェンダー格差やフェミニズムにまつわる問題は、たくさんの賛否を巻き起こし、根も深く「脱構造」が難しいテーマと言えます。


以上を踏まえると、このようなテーマを企業が支援するのは難しいと感じます。私の会社員の経験から言っても、かなり困難だと感じます。

ですが、脚本や音楽、劇場やキャストなど、内容が具体的に説明できるレベルになったら、企業協賛金の出資者を募る挑戦はしてみようとは思っています。

(今後協賛してくれる企業が現れたら、みんなでその企業を褒め称えてほしいです)



④個人投資家による投資

最後に、個人投資家による投資についてです。

ブロードウェイでは作家の作品に、エンジェル投資家という個人投資家が投資をするケースが多くあります。エンジェル投資家を集めた資金調達のための公演もあったり。


理由は、ミュージカルがハイリスクハイリターンのビジネスだからです。作品が大当たりすれば、ロングラン、そして全世界で公演されれば、投資家たちは億万長者です。


ですが、今のところ日本のオリジナル作品が、そのルートに乗ったことはありません。なので、作品に投資する投資家たちがほとんどいません。



【クラウドファンディングのわけ】

私の大きな夢のひとつは、Protopiaのオリジナル作品を世界に羽ばたかせることですが、そのプロセスでは「作品投資」という手法を日本にも根付かせたいと考えています。

「作品投資」が普及すれば、日本のオリジナルミュージカル制作者が増え、品質も向上するはずです。きっと日本が誇れる作品が生まれます。


実は、今回のクラウドファンディングは、この「作品投資」普及の第一歩になりうると考えているのです。


「作品投資」を普及させるためには、「公演の前段階」で「応援したい」「お金を払う価値がある」と思ってくださる人を探さなければなりません。

ですが、前述した通り日本にはそれをしてくださる方がいるのか、どこにいるのか、誰なのかが全くわかりません。


そこで、作品初期の段階から、インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する」という本来のクラウドファンディングの形式を独自に実施することで、

Protopiaの「信念」「活動」、そして作品の「テーマ」「背景や想い」「内容」にお金を払う価値があると思ってくださる人と出会いたいと思っています。

脚本が完成すれば、音楽も一部公開していく予定です。


巷ではよく、役者にチケット販売が託されすぎていると話題になります。

私はカンパニーが一丸となってチケットを販売する風土ができたらいいと思っていますが、現状、役者に頼りすぎてしまっているという側面は否めないと思います。

そんな中で、この取り組みは企画制作者であるProtopiaが、今後Protopia作品のファンになってくださるかもしれないお客さまと出会うための旅とも言えます。



クラウドファンディングには大きく分けて、「寄付型」「購入型」「投資型」があります。


・「寄付型」は、リターンを伴わないもの

・「購入型」は、何らかの権利や物品を購入することで支援を行うもの

・「投資型」は、金銭リターンが伴うもの


です。日本で普及しているのは「寄付型」と「購入型」です。


できれば「投資型」に挑戦したいのですが、「投資型」を実施するには金融商品取引業の登録が必要で、簡単にはできません。

そこで、高価な返礼品、風変わりな返礼品、誇大広告を避けて「寄付型」「購入型」を利用しているというわけです。「購入型」でもあるので、私たちなりに支援者に実利がありそうなリターンを設定したつもりです。



「出会い」に重きを置いているので、今のタイミングでは、広くSNSで呼びかけるのみで、クラウドファンディングによくある「個人連絡」を一切していません。


まだ、ブログの記事を2つしかあげていないのに、面識のない方からの支援もいただいております。ありがたい、まったくその一言につきます。

もちろん、存じ上げている方々からのご支援も最高に嬉しいです。なぜなら、私の感じるところ、役者さんを応援している人はたくさんいますが、ミュージカルにおいて、小規模の制作団体を応援してくれる人はまだ少ないからです。期待に応えたいと切に感じます。


取り組みをはじめたばかりで、支援金はまだ少額ではありますが、公演実現まで一歩ずつ歩みを進めていきたいと思います。もちろん、公演実現に向け、クラウドファンディング以外の資金調達にも果敢に挑戦していく所存です。


すでにご支援いただいた皆様、ありがとうございます。

新たに、ご興味を持ってくださった方は、ぜひクラウドファンディングページを覗くだけでも覗いてもらえたら嬉しいです。

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次回からは、「日本のジェンダー格差の歴史」を記事にして更新していく予定です。



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